~第2回:中国の特色(6カ国の比較から)~
中国企業による日本特許庁(JPO)への出願状況を弊所において独自調査致しましたので、その結果を数回に分けてレポートします。第2回は、中国から日本への特許出願の特徴を、日本への特許出願が比較的多い他の5カ国(KR,US,DE,GB,FR)との比較に基づいて考察します。なお、この調査は弊所が商用データベースを用いて独自に行ったものでJPOにより発表されたものではなく、若干の誤差が含まれている可能性があることにご留意下さい。
1 直接出願とPCT国内移行の比率
本レポート第1回に記載したように、中国企業(出願人住所が中国国内となっている企業。台湾除く)による2017年の出願公開(PCT国内移行の日本語翻訳文のJPOによる公表を含む)件数4077件のうち、直接出願が743件で、PCT国内移行が3334件でした。すなわち、2017年の出願公開件数のうちPCT国内移行が82%を占めています。
KR,US,DE,GB,FRの5カ国についても、同じく、2017年の出願公開のうちPCT国内移行が占める割合(PCT国内移行件数/(直接出願件数+PCT国内移行件数))を調べました。その結果を図1に示します。
<図1>
図1から分かるように、比較した主要6カ国の中で、PCT国内移行比率が最も高かったのが中国でした。その理由としては、中国から日本に特許出願する案件はUSなどの他の数カ国にも特許出願する場合が多いためPCT利用の利便性が高いこと、中国で特許制度が始まったときに既にPCTがあったために因習へのこだわりが少ないことが考えられます。
2 実用新案の比率
本レポート第1回に記載したように、中国企業による2017年の特許登録件数は2409件で、実用新案登録件数が328件でした。すなわち、2017年の実用新案比率(実用新案登録件数/(特許登録件数+実用新案登録件数))は12%でした。
KR,US,DE,GB,FRの5カ国についても、同じく、2017年の実用新案比率を調べました。その結果を図2に示します。
<図2>
図2から分かるように、比較した主要6カ国の中で、中国は実用新案比率が際だって高いということが分かりました。実用新案制度があるKRでも実用新案比率は1.5%しかなく、DEは0.3%に過ぎません。これはSIPOへの実用新案出願数が特許出願数よりも多いという状況を反映しているものと思われます(2017年のデータでは特許出願138万件に対して実用新案出願数が169万件)。
3 登録案件の公開年別分布
本レポート第1回に記載したように、中国企業による2017年の特許登録件数2409件のうち、2016年公開の出願が1213件で最も多く、次に2015年公開の508件となりました。詳細は内訳は第1回レポートの表2に示したとおりです。
KR,US,DE,GB,FRの5カ国についても、同じく、2017年の特許登録案件の公開年別の分布状況を調べました。その結果を図3に示します。
<図3>
図3から、中国から日本への特許出願は、他の主要5カ国からの特許出願に比べて、早期に権利化されていることが分かります。DE,US,GB,FRの4カ国はピークが2015年であり、ピークが2016年であるCN,KRから1年シフトしています。また、KRとCNを比べると、2016年のピークがCNの方が高く、2013年、2014年の割合がKRの方が多いことが分かります。また、CNは、2017年の割合が他の5カ国の2倍程度あります。
上記のような傾向が現れている理由としては、中国企業が比較的早期に審査請求を行っていることがあるように思われます。